本記事は2026年6月12日時点の公表情報に基づく一般的な情報提供であり、税務助言ではありません。新制度の詳細(対象銘柄の範囲・施行時期など)は今後の法令・政省令で確定するため、変更される可能性があります。申告・投資の判断前に必ず 国税庁の一次情報 と最新の公表資料、必要に応じて暗号資産に詳しい税理士にご確認ください。
監修について: 本記事は税理士等の外部専門家による監修を受けていません。公表された一次情報・公的資料を根拠に、編集方針に基づいて編集部が作成・更新しています。
・暗号資産の利益に一律20%(復興特別所得税込みで20.315%)の申告分離課税と3年間の損失繰越控除を導入する税制改正が決定。改正所得税法は2026年3月31日に成立済み。
・適用開始は「改正金融商品取引法の施行日の属する年の翌年1月1日」。金商法改正案の審議次第だが、2028年1月1日からが有力視されている。
・全員・全取引が20%になるわけではない。対象は国内登録業者経由の取引が想定され、海外取引所・DEX・ステーキング報酬は対象外(=総合課税のまま)となる見込み。
「仮想通貨の税金が株と同じ20%になるらしい」— 2025年末からこの話題を目にした方は多いはずです。結論から言うと、方向性は本当に決まりました。ただし「いつから」「誰の・どの取引が」という肝心な部分には条件が付いており、ここを誤解すると想定外の税負担につながります。本記事では、2026年度(令和8年度)税制改正で決まったことと決まっていないこと、適用までのスケジュール、そして対象外となる取引の落とし穴を整理します。現行制度の基礎(雑所得・総合課税の仕組み)は暗号資産の税金ガイドで詳しく解説しています。
何が決まったのか? — 大綱から法律成立までの流れ
2025年12月19日に与党がまとめた2026年度(令和8年度)税制改正大綱に、暗号資産取引への申告分離課税の導入が明記されました。その後、関連する改正所得税法が2026年3月31日に成立・公布され、税制側の枠組みは法律として確定しています。
決まった内容の柱は次の3つです。
- 税率は一律20% — 所得税15%+住民税5%。復興特別所得税を含めると20.315%で、上場株式等の譲渡益課税と同じ水準
- 損失の3年間繰越控除 — 対象取引で出た損失を翌年以後3年間、対象取引の利益から控除可能に。現行制度では認められていない仕組み
- 対象は「一定の暗号資産取引」 — 現物の譲渡に加え、デリバティブ取引や暗号資産ETFも視野に入れた制度設計が示されている
・現行の税率: 雑所得・総合課税で約15〜55%(所得税5〜45%+住民税約10%、所得額に応じた累進)
・新制度の税率: 一律20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
・損失繰越: 現行不可 → 新制度では3年間可(対象取引のみ)
いつから適用される? — 鍵は「金商法改正」のタイミング
ここが最も誤解の多いポイントです。20%課税はまだ始まっていません。適用開始日は「改正金融商品取引法の施行日の属する年の翌年1月1日」と規定されており、暗号資産を金商法の規制対象(金融商品)に位置づける法改正とセットで動く設計です。
金商法改正案は2026年の通常国会への提出が見込まれており、仮に2026年中に成立し2027年に施行された場合、分離課税の適用は2028年1月1日以後の取引からとなります。これが現在多くの解説で「2028年から」とされる根拠です。逆に言えば、金商法改正の審議が遅れれば適用開始も後ろにずれます。
対象になる取引・ならない取引 — ここが最大の落とし穴
新制度は「暗号資産の利益すべてが20%になる」制度ではありません。分離課税の対象は、金商法の規制に対応した国内の登録業者(暗号資産交換業者等)を経由する一定の取引が想定されています。具体的な対象銘柄・取引の線引きは今後の政省令等で確定しますが、現時点の公表情報からは次のような整理が見込まれています。
SNSでは「2028年から仮想通貨の税金は全部20%」という表現が広がっていますが、海外取引所やDEXでの取引、個人間取引は対象外となる見込みで、これらの利益は引き続き雑所得として総合課税(最高約55%)の対象です。またステーキングやマイニングの報酬も今回の分離課税の対象として挙げられていません。「どこで・どう取引するか」で適用される税制が変わる時代になる、という理解が正確です。
税負担はどう変わる? — 現行制度との比較
対象取引に限って言えば、変化は劇的です。現行制度と新制度(見込み)を並べると次のようになります。
| 項目 | 現行(〜適用開始まで) | 新制度(2028年見込み) |
|---|---|---|
| 所得区分 | 雑所得(総合課税) | 申告分離課税 |
| 税率 | 約15〜55%(累進・住民税込) | 一律20.315% |
| 損失の繰越控除 | 不可 | 3年間可(対象取引のみ) |
| 対象 | すべての暗号資産取引 | 国内登録業者経由の一定の取引 |
| 対象外の取引 | — | 海外取引所・DEX等は総合課税のまま |
1点だけ注意があります。現行の総合課税では、課税所得が低い帯なら適用税率が20%を下回ることもあります(例: 所得税5%+住民税10%=約15%)。つまり「全員が減税」ではなく、利益が大きい人ほど恩恵が大きい制度変更です。逆に少額の利益なら、現行制度の方が税率が低い場面もあり得ます。
2027年までの注意点 — 「まだ現行ルール」を忘れない
適用開始までの期間(少なくとも2027年分まで)は、すべて現行ルールで課税されます。具体的には次の点が変わりません。
- 利益は雑所得・総合課税(最高約55%) — 計算方法は税金ガイドの通り
- 暗号資産同士の交換・決済利用も課税イベントのまま
- 損失の繰越は不可 — 2027年までに出した損失を2028年以降に持ち越すことはできない
・国内取引所で現物を売買している会社員 → 2028年(見込み)以降の利益は20.315%+繰越3年の対象になる可能性が高い。それまでは現行ルール
・海外取引所・DEXがメインの人 → 新制度の恩恵は受けられない見込み。引き続き総合課税を前提に納税資金を確保
・ステーキング報酬を受け取っている人 → 報酬の受領は今回の対象外。受領時の時価で雑所得として認識する現行実務が続く見込み
今からやるべきこと — 制度切り替えへの備え
① 取引記録の習慣を続ける — どちらの制度でも正確な取得価額の記録が計算の前提。制度切り替え時には「いつ取得した分か」が今以上に重要になる。
② 取引の「場所」を整理する — 国内登録業者経由か、海外・DEXかで将来の税率が分かれる見込み。自分の取引がどちらに属するかを棚卸ししておく。
③ 続報は一次情報で追う — 対象銘柄の線引き・施行時期は金商法改正の審議と政省令で確定する。金融庁・国税庁の公表資料を起点に確認する。
よくある質問
Q. 海外取引所やDEXでの利益も20%になりますか?
現時点の公表情報では対象外となる見込みです。分離課税の対象は金商法の規制に対応した国内登録業者経由の取引が想定されており、海外取引所・DEX・個人間取引は引き続き雑所得・総合課税(最高約55%)のままと整理されています。
Q. ステーキング報酬はどうなりますか?
今回の改正で分離課税の対象として挙げられていません。受領時に雑所得として総合課税される現行の扱いが続く見込みです。将来の制度設計で扱いが変わる可能性はあります。
Q. 損失の3年繰越はいつから使えますか?
繰越控除は新制度の適用開始(2028年1月見込み)以後に生じた対象取引の損失からです。2027年までに出た損失を繰り越すことはできません。
筆者は、今回の改正の本質は減税そのものではなく、「暗号資産が金融商品として制度に組み込まれる」ことだと考えています。20.315%と繰越控除は株式と同じ土俵に乗るための入場券であり、同時に「国内登録業者経由」という条件は、規制の外で取引する自由とのトレードオフを投資家に突きつけます。2028年(見込み)までの移行期間は、税率を云々する前に、自分の取引をどこで行い、どう記録するかを設計し直す期間として使うのが合理的でしょう。
Next Steps — 今日からできること
出典・参考資料
- CoinDesk JAPAN「【速報】与党、暗号資産は『分離課税』へ、金商法施行の翌年から適用──税制改正大綱」(2025年12月)
- 日本経済新聞「仮想通貨所得、20%分離課税に 28年から株式・投資信託並みに下げ」
- 大和総研「暗号資産取引に20%の申告分離課税導入へ」(2026年2月)
- CoinPost「税制改正大綱で仮想通貨税制が大きく前進、申告分離課税20%と3年間の繰越控除を明記」
- カオーリア会計事務所「暗号資産の分離課税化はいつから?令和8年度税制改正大綱のポイント」
- 国税庁 タックスアンサー No.1524「暗号資産を使用することにより利益が生じた場合」(現行制度)
- 金融庁「暗号資産関係」
Q. 20%申告分離課税の「対象になる見込み」が高いのはどれ?
解説: 分離課税の対象は金商法の規制に対応した国内登録業者経由の取引が想定されています。海外取引所・DEX・ステーキング報酬は対象外(総合課税のまま)となる見込みです。
- 2026.06.12 初版公開